夢を見たあとで
今日は殊更 ツイてない 電話問い合わせの対応とは名ばかりで 今日はチームの中で自分だけが契約を取れなかった それどころか数ヶ月前に担当した客がクレーマーで 何も考えたくないのにウォークマンは電池切れ それでも ただただ丸腰でバスに乗るのが酷く孤独に思えて
車内の温度で曇る窓ガラスに少しだけ頭を預け 目を閉じて揺れに任せていると後方での話し声が耳に入ってきた
「何か結構募集出てるよね」 「知ってるー 時給結構よくね?」 「・・・あれは やめた方がいいよ」 「えーなに やっちん 「・・・あれはノイローゼになる」 「・・・」
・・・ ・・・
でも 頑張って履歴書出したけど
君はまだ学生だね 君のような若くて先のある人は マトモな人間がやる事じゃない仕事を
辞めたいと思っても 行くしかないんだ生きる為に
ありがたいと思って どうしても思えないんだ
今のこの不況の世の中ではそれすら やっと職にありついて 必死で働いても
職を失う度に生活のランクは下がっていくし 歳をとるたびに求人枠から締め出されていく
有名な歌手が歌っていた 生きるのが苦しいとか辛いとか言う前に力の限り生きろと
まだ必死さが足りないといわれるだろうか
まだ生きるのが辛くなってきたと言ってはダメか まだ苦しいと吐露してはいけないのだろうか
降りる1つ前の停留所のアナウンスで目が覚めた 隣に誰かが立っている気配がする 薄目を開けて足元を見ると 男物の靴が見えた
それだけじゃない 多分身長もあるのだろう
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